クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
パート6
翌週の土曜日に、梓の勤める塾には竹本由梨と卓が来ていた。
由梨は卓を入塾させて、私立の中高一貫校を受験させたいという希望のようだ。
「卓も頑張りたいって言ってるし、塾の雰囲気も良かったから。」
「そうなの?」
小学生が週に何度か新宿まで通うのは大変だ。
「私が送り迎えするから、ここまで通えるかなって思うの。」
「そうね…。やる気が本人にあるなら、取り敢えずテスト受けてみる?」
「入塾テスト?厳しそうね。」
「一応、クラス分けがあるし志望校が決まればそれに合わせた授業になるの。」
「卓、どう?やれそう?」
「うん、何だか面白ろそうだ。」
卓は目をキラキラさせて母親に返事をしている。確かにやる気はありそうだ。
「あら、頼もしいわね。」
「じゃ、一階で入塾の申し込み資料をお渡しします。」
塾講師の顔になって、梓が言った。
「よろしくお願いします。ウフフ…。」
「なあに?」
「梓とまた、新しい繋がりが持てたなって思って。」
「あら、腐れ縁ですもの当分続くわよ。」
気安い会話に笑いが零れる。
資料を渡して手続きの説明をした後、三人はビルの外まで出た。
「ここまでの道順とか交通機関とかよくお母さんとお話ししてね。」
「はあい。」
見送りがてら、梓は由梨と卓に通う時の注意点を確認をする。
その時、卓の元気いっぱいの声がした。
「あ、パパだ!」
夕闇の中、道路の反対側に見えたのは竹本信也と若い女性の姿だった。
寄り添った二人は、新宿の繁華街へと進んで行った。
いったい土曜日のこんな時間、彼らは何をしているのだろう。
梓が由梨を見たら、キッと唇を結んで信也の消えていく後姿を見つめていた。