クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
『10年経っても、俺は梓に欲情したって事か…。』
航はそのまま、梓の肩に軽く手を置いた。
驚いて固まったままの梓はバランスを崩し、尻もちをつく格好になってしまった。
正面にしゃがんだ航がいるので、両手を後ろに付いた梓は身動きできない。
梓の肩に置いた手に力を込めた。すると、グラリと簡単に梓が倒れ込む。
窓の方へ頭を向けた形で、あっという間に仰向けに寝転んだ。
尻もちをついた時のままなので、梓の両手は身体の下になっている。
「梓…。」
その顔からマスクを剥ぎ取ると、形の良い口唇が現れた。
ほとんど素顔に近い薄いメイクで、口紅はつけていない。
なのに、淡いピンクのそれは美味しそうだった。
『そういえば、朝食を食べていなかった…。』
そんな事を考えながら、航は梓の唇に覆いかぶさっていった。
「やめて…。」
梓が初めて声を出したが、もう遅かった。
彼の動きは止まらない。
柔らかな頬も、唇も貪るように味わっている。
その手は、あろうことかシャツの上から胸をまさぐってきた。
振りほどこうとするのだが、手は自分の体重で動かせない。
もっと残念な事に、梓の中にはそれを受け入れてしまう自分がいた。