クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!


航に紅茶を勧めながら、梓はあっという間にケーキを食べ終えた美晴に言った。

「さ、ごちそう様したら宿題しなくちゃね。」
「あとドリルがちょこっとだけだから、いいよ。」

「ダメ。ゲームの前に宿題してきなさい。」
「はあい。おじさん、まだいてくれる?」

「ああ…。」

航は返事しながら、梓の頬がピクリと揺れるのが見えた。

「でもそろそろ、帰らなくちゃ…。」
「え~っ、この前おじさんに貰ったゲームするところ見てもらいたいのに~。」

いつになく、美晴が甘えた声を出す。
航の存在自体が、甘えたい気持ちにさせているのだろうか。

「なら、急いで宿題してきなさい!」
少し厳しめの声で、梓がきっぱりと言った。

「はあい。」

今度は母の本気が伝わったのか、美晴はバタバタと部屋に駆け込んだ。
ぱたんとドアを閉めてしまうと、ダイニングには元夫婦の二人だけになった。

「ごめんなさい。美晴がお引止めして。」

他人行儀な話しぶりに、航の心がチクリと痛んだ。







< 72 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop