クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
航に紅茶を勧めながら、梓はあっという間にケーキを食べ終えた美晴に言った。
「さ、ごちそう様したら宿題しなくちゃね。」
「あとドリルがちょこっとだけだから、いいよ。」
「ダメ。ゲームの前に宿題してきなさい。」
「はあい。おじさん、まだいてくれる?」
「ああ…。」
航は返事しながら、梓の頬がピクリと揺れるのが見えた。
「でもそろそろ、帰らなくちゃ…。」
「え~っ、この前おじさんに貰ったゲームするところ見てもらいたいのに~。」
いつになく、美晴が甘えた声を出す。
航の存在自体が、甘えたい気持ちにさせているのだろうか。
「なら、急いで宿題してきなさい!」
少し厳しめの声で、梓がきっぱりと言った。
「はあい。」
今度は母の本気が伝わったのか、美晴はバタバタと部屋に駆け込んだ。
ぱたんとドアを閉めてしまうと、ダイニングには元夫婦の二人だけになった。
「ごめんなさい。美晴がお引止めして。」
他人行儀な話しぶりに、航の心がチクリと痛んだ。