クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
指切りをする航と娘を、複雑な気持ちで梓は見守っていた。
『自分さえ意地を張らなければ、二人は親子として暮らせるんだ。』
悔しさと、切なさで胸が一杯になってきた。
『私の事も見て!』
子供じみた叫びは、心の中だけに閉じ込めた。
こうして、航と美晴の交流が始まった。
航は最初の頃はぎこちなかったが、時間のある日は夕方に梓のマンションを訪れ
美晴と遊んだり夕食を三人で食べたりする。
美晴は、『お母さんのお友達のおじさん』と思っているのだろう。
伯父の健吾に対するより、少し礼儀正しかったが
日を追うごとに遠慮も無くなり、航に親近感を抱いた様子だ。
航からは新宿のマンションにも来て欲しいと言われていたが
そこまで踏み切る勇気は、梓には無かった。
彼とこのまま適切な関係を保っていたい。『女』の部分を見せたくない。
彼のマンションに行けば、その決心が鈍りそうで怖かったのだ。
秋はどんどん深まっていく。
三人の時間も、まるで『家族の団らん』のように充実して行くのだった。