クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
由梨には、塾まで一人で来た卓を預かった事をメッセージで伝えた。
やはり帰宅時間が遅い事を心配していた様子だ。直ぐに既読になり返信が届いた。
『ゴメンね、直ぐに迎えに行く!』
由梨の気持ちもわかるが、卓が自分を訪ねて来た理由も確認したい。
彼の話を聞いてから、後で必ず連絡する事だけ再度送信しておいた。
ハンバーガーとポテトで子供たちのお腹が落ち着いた頃、
梓はのんびりとした口調で卓に聞いてみた。
「卓くん、今日はどうしたの?先生にお話があったのかな?」
言いにくそうに俯いて、卓が小さな声で囁いた。
「パパとママが…毎晩ケンカしてるんだ。」
「そう…。」
「僕が寝たふりしていると、ケンカしてる声が聞こえて…。」
「それで、お家がキライになちゃったの?」
「うん…あんなママとパパのコワイ声、聞きたくないし…。」
子供には深刻な悩みだ。きっと例の浮気疑惑が原因だろう。
「だよね~。学校でもみんながケンカしてるの時の声ってコワイもん。」
いきなり美晴が口を挟んで来た。事情が分かってるような口をきく。
「僕、大人のケンカの話してるんだけど。」
「美晴、ちょっとお口チャックしようか。」
「は~い…。」
ふう~っと、落ち着く為に深い息を吐いてから、梓が優しく卓に言った。
「卓くん、今日は先生のお家においで。お母さんには先生が連絡するから。
きみのお着換えとか持って来てもらおう。」
「いいの?お泊りして、いいの?」
「いいよ。ただし、塾の先生じゃなく、お母さんのお友達って事でね。」
「わかった!」
ようやく、いつもの卓らしい元気の良い返事が返ってきた。