クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!

 由梨に電話したら、直ぐに荷物を詰めたリュックを持って飛んできた。
目元が赤いのは、卓が家に帰らなかった理由をメッセージで送ったので
それを見て泣いていたのかもしれない。


子供達が美晴の部屋でゲームに興じている間に、
お茶を飲みながら、梓と由梨は卓の悩みについて話し込んだ。

「竹本君と、卓くんが悩んでる事をゆっくり話してみたら?」
「あの人と話が出来ないから、つい大きな声になっちゃって…。」

「困ったね…。」

「ねえ、美馬君に竹本と話してもらえないかなあ…。」
「どうして?」

「あの人、私が話そうとしたら逃げるんだもの。あの(・・)疑惑のこと。
 おまけに私がお義母さんから二人目の事を聞かれて困ってるのに…
 話そうとすると毎晩理由をつけて、逃げるのよ。」

「だからって、航じゃあ無理でしょ。あっさり離婚した人だよ。」
「だからよ。二人目なんて無理よ。私達とっくにセックスレスだし…。
 このままだと、離婚になるかもって彼に覚悟してほしいんだ。」

「由梨…。」

赤裸裸な友人達の夫婦関係を聞かされて梓も返事に困った。
由梨も、誰にでも話せることでは無いから悩んでいたのだろう。

「私、ずっと考えていたの。もう疲れちゃったのよ…。」

ああ、私もそうだった…。梓は10年前を思い出していた。

相手にしてくれない人と何とか話し合おうと努力する事には忍耐がいる。
疲れ果ててしまった由梨の気持ちは、経験者の自分には良くわかる。

「一応、聞いてみるけど、期待しないでね。」

「ありがとう、梓。」


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