クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
航が帰って、そろそろ子供達を起こそうかという頃にノックが聞こえた。
こんな早くに…と思いながらドアスコープから見ると、兄の健吾が立っていた。
「よっ。おはよう。」
「どうしたの、こんなに早く。」
「母さんが仕事の前にこのビーフシチューを届けろって煩くて…。」
「ああ、美晴の好物だから。喜ぶわ。」
重いからと鍋を持ったままキッチンまで入った健吾は、
テーブルの上に並んで置いてあった二個のマグカップを見て驚いた。
「誰か…ていうか、ヤツが泊ったのか?」
「ヤツって…。たまたまよ。美晴の顔を見てるうちに寝ちゃったの。」
「それだけか?」
「嫌だ。何考えてるの?」
「そりゃあ、元夫婦だからモトサヤもありだろう。」
「朝からバカな事言わないで。」
「だって、俺から見たら、お前らの方がバカみたいだぜ。」
「どういう事かな…。」
「お互いに相手の為にって言いながら、ずっと気持ちがすれ違って
二人とも空回りしてるじゃないか。
相手が大切なら、もっとシンプルに考えればいいのにって思うよ。」
「シンプル?」
「そうだ。好きなら好きって言え。一緒にいたいなら三人で暮らせばいい。
美晴にも父親の事をはっきり伝えてやればお前らも楽になるぞ。
美馬航は確かに美晴の父親なんだから。」
「兄さん、声が大きい!」
「あ、ゴメン。」