クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
「美晴ちゃん、おじさんが直ぐに迎えに行くからね。
その場所を動かないで、何か目印になるものがないか探して。」
『わかんない…人がいっぱいいて。卓くんに代わるね。』
「たかし…?」
昨夜、梓が言っていた竹本と由梨の子供だろうか…。
『もしもし…』
「たかしくん、これから迎えに行くから、近くに何か目印あるかい?」
『思ってる方向に行けなくて…いつも行く塾と反対の方向に来ちゃたみたい。
何とかっていう銀行の出張所が見える。』
「屋代先生の塾と反対方向だね。わかった。そこに居て。動いちゃダメだよ。」
大声で話す声が聞こえて社長室に入った芳賀は
途中から話を聞いていたのだが、焦った様子の航を見て驚いている。
どうやら子供相手に話しているのか、いつもの落ち着いた雰囲気ではない。
「社長、どちらに行かれるんですか?次の仕事が~ああっ!」
航は芳賀の制止を振り切って、社長室から飛び出した。
エレベーターを降りて地下街に入ってからも、また走る。
考えたら全力で走るなんて何年ぶりだろう。
トレーニングマシンではない。スーツに革靴姿でダッシュしているのだ。
だいたいの検討をつけておいた場所まで、ひたすら走った。