クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
「今朝、健吾伯父さんがうちに来た時に聞こえちゃった。
美馬のおじさんがお父さんだって。だから会って確かめようと思って…。」
「それで、電話してきたのかい?」
「うん。おじさん、美晴のお父さんなの?間違ってない?」
不安と期待の入り混じった美晴の視線を受けて、航は心が震えた。
「そうだよ、お父さんだ。」
グイっとソファーの隣に座っていた美晴を膝の上に抱き寄せる。
「お父さん?」
美晴が航の顔を見上げて言った。
「ああ…。」
「ホントだったんだあ!」
今度は美晴から航の胸飛び込んだ。
向い側に座っていた梓からは、父と娘が抱き合っているというより、
体格の良い航の胸に小さな娘がしがみついている様に見えた。
小さな手、まだ細くて脆い身体、その全部で父親の存在を確かめている。
『ああ…。やっと手に入れた。』
娘が自分の胸に飛び込んで来た時、トンと微かな衝撃があった。
それからじわじわと温もりが伝わってくる。
サラサラのおかっぱ頭を撫で、背中をさすり、娘を受け止めてやる。
『こんな簡単な事を俺は迷っていたのか…。』
あんなに抱きしめたかった娘がようやく腕の中にいる。