図書館司書に溺愛を捧ぐ
「お兄ちゃん、カナダはどうしていったの?」

「うん……色々あってさ。親がちょっとだけ有名な建築家なんだ。だから俺もそっちに期待されててさ。で、反抗期も重なって親の期待に応えるのが疲れて図書館に逃げ込んでたって感じかな。でも紗夜ちゃん見てたら友達と色々会っても頑張ってるし、図書館は心の拠り所だけどいつまでもこうしていられないってだんだん分かってきたんだ。ただ、周囲の期待に疲れたから海外留学を望んだ。もともと教育熱心な親だったから俺は英語が得意だったし、世界を見たいって言ったら許可してもらえたよ」

「そっか。私は図書館から抜け出すのに何年もかかりましたけどね」

「それは俺より小さかったからだろ」

「私もあの後中学受験してやっと抜け出したよ。でもその後も時々行ってたし、やっぱり仕事もここに戻りたくて司書になりましたよ」

「司書になるのも楽なわけではないだろ。努力して今の自分があるんだから自分を褒めてあげても良いんじゃないか?」

そう。司書になるのは楽ではない。そして空きがないと就職できないのにこの道に進もうと思ったのにも強い意志がないと出来ないこと。それをお兄ちゃんの口から言われ、改めて努力を認められたようで嬉しくなる。

お兄ちゃんは相変わらず前向きに私を褒めてくれる。
人見知りな私でも根気強く話しかけてくれたことを思い出した。

またお兄ちゃんに会えてよかったと思った。
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