図書館司書に溺愛を捧ぐ
「紗夜、紗夜ってば!」

「あ、うん」

あずさに言われてハッとした。
基紀さんが結婚しているかもなんておもってもみなかった。
胸の奥がもやもやとし、ぎゅっと掴まれたような気持ちになる。
どうしちゃったんだろう。
基紀さんのことになるとなんだか落ち着かなくなる。

「紗夜、ホットサンドきたよ」

「あ、うん」

気もそぞろになり返答できずにいるとあずさから私の顔を覗き込んできた。

「ねぇ、もしかしてお兄ちゃんのこと気になってる?好きになった?」

「え?」

「紗夜の顔にそう書いてあるみたいだけど」

私は急に顔が火照るのを感じ、鼓動が高まる。
好き?
自覚のなかったこの気持ちに名前がついた気がした。
好き、なのかな。
好きなのかも……。

「紗夜は顔に出やすいね。遅咲きの初恋だもんね」

そう、私は怖くて恋愛出来ずにいた。
周りに男の子がいなかったわけではないが、恋愛となると急に怖くなった。2人で会うなんて出来なかった。
人見知りはだいぶよくなったけれど2人で会うなんてのはなんとなく不安で仕方なく、気後れしてしまい誘われても行けずに終わった。
そんな私を知っているあずさはいつもバカにするわけでもなく、私のペースでいいと思うよと言ってくれ安心させてくれていた。
そんなあずさに初恋と言われた。
恋なのかな。

頭の中が混乱しているとあずさが半分ずつホットサンドを分けてくれ、目の前に置かれた。

「ほら、食べようよ。そういえばお兄ちゃんとはご飯に2人で行けたんだよね?」

「うん」

「紗夜は男の子と2人でなんて絶対ご飯にいけなかったのに自然と行けたなんて凄いよね。紗夜を連れ出せたお兄ちゃんを見てみたいよ」

そう言われてみればお兄ちゃんに誘われた時、自然と食事に行けた。
え?と反応することもなかった。
食事に行っても私の苦手そうなお店は避けてくれたのもあるかもしれない。
でもお兄ちゃんだから、と思ったからなのかな。

< 30 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop