図書館司書に溺愛を捧ぐ
あずさに急に「好きなの?」と言われ、自覚したこの気持ちを自分の中で持て余してしまう。

初めはお兄ちゃんと思っていたがいつのまにか基紀さんとして気になっていたのかも。
図書館のスタッフが声をかけるのも目で追っていた。
莉奈ちゃんが彼のそばに行くたびモヤモヤとしていた。
いつも行く海外の街並みが載った写真集や設計に関する本のコーナーをつい見てしまう。来なくなった彼を待ち続ける自分がいた。

でも……結婚していたら、と思うと急に不安になった。
やっと自覚したこの恋心に影を落とす。

私は何も言えず考えを巡らせているとフフフと笑い声が聞こえた。

「紗夜、本当によく顔に出てるね」

「え?」

「お兄ちゃんが好きになっちゃったんだね。でも私が余計なこと言ったから気になってる、だよね?」

「お兄ちゃんが好きなのかな。すごく気になるの。知らないうちに目で追いかけてた」

「それは好きなんだと思うよ。結婚してるのか聞いてみたら?」

「でも最近図書館に来ないの」

「連絡してみたらいいじゃない。今度いつくるの?でもいいし、紗夜は夏休みなんだから食事に誘ってもいいと思うよ。その時にもし奥さんが待ってるなら誘わないって言えば?」

「無理!言えない」

「ま、それで奥さんいても平気だよなんていうようじゃ論外だから聞いてみたらいいと思うんだけどな」

「あずさなら言えるの?」

「さらっとね。口籠ると意味深だからさらっと、気になったから聞いてみた、くらいに軽く言えばいいよ」

「難しいよ」

「でも、そこを聞かないことには何も始まらないよね」

あずさのいいたいことはわかる。
確かにそう。
でも、好きだけど付き合いたいのかと言われるとわからないというのが本音。
付き合うってことがよくわからないから。

「ま、ゆっくり紗夜のペースで考えたらいいよ。ほら冷めちゃうから食べよう」

「ごめん、本当だね。食べよう」

私は食べながら基紀さんのこと、あずさから言われたことが頭から離れずにいた。
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