図書館司書に溺愛を捧ぐ
門構は何屋さんかわからないような雰囲気。
暖簾も何屋かわからず端に小さく“橘”とだけ書かれていた。
木の温もりがあり、とてもおしゃれだが中に入ると一見して寿司屋さんとはわからない。趣のある渡り廊下を通ると両脇に玉砂利が敷いてあり、間接照明で照らされている。私たちはプライベートが守られる半個室へと案内された。
個室は隣との境には簾がかかっており、声は多少漏れるが姿は見えない。照明も和紙で出来た照明で灯りが柔らかく温かみがあった。
「すごく素敵なお店ですね」
「良かった」
「なんだか温かみのある落ち着くお店ですね」
「そう?味もおいしいんだ。昨日イタリアから帰国したから日本食が恋しくてさ。だから紗夜ちゃんにパン以外と言われホッとしたよ」
「イタリアですか?」
「そう。2週間の視察と仕事の打ち合わせでさ」
最近見かけなかったのは出張だったってことなのね。
莉奈ちゃんとの件で来なくなったのではないかと思ったから私は少し安心した。
「今日休みだったんだね。図書館で見かけないから声をかけたら休みって言われたよ」
「今週夏休みなんです。だから友達と買い物に行ってきたんです」
「だから両手一杯の荷物なんだね」
私の荷物を思い出し基紀さんはクスクス笑う。
「女の子はみんな買い物が好きですからね」
私は先程の紙袋の量を見られ少し恥ずかしくなり肩をすぼめた。
「確かに、みんな好きだよな。荷物の多い人がいる、と思ってふと見たら紗夜ちゃんでさ。見つけられて良かったよ。ま、見つけられなくても家に帰ったらメッセージを送ろうと思ってたんだけどさ」
コトン、と机の紙袋が置かれた。
「イタリアのお土産だよ」
「私に?ありがとうございます」
中を見てみるといくつか小箱が入っている。
開けてみると一つ目は陶器のベルが入っていた。
「それは幸運を招くベルだよ。鳴らすと幸運が訪れるって言われている。紗夜ちゃんに今より更に幸運がくるように、と思って」
鳴らしてみると柔らかい音がしていて心地いい響きがする。陶器に描かれているデザインも可愛い。なにより私の幸せを祈って、だなんて言われて嬉しいけどその言葉に恥ずかしくなった。さらりとこんなことを言えてしまう基紀さんはやはり海外生活が長いからなのかな。
他にはレモンのシロップの瓶も入っていた。
最後に小さな小箱を開けてみるとベネチアンガラスで出来たネックレスが入っていた。
小ぶりでどんな服にも合いそう。赤に見えていたが角度を変えると緑に見えたり黄色に見えたりと表情を変える素敵なネックレスで一目で気に入ってしまった。
「すごく素敵です。ありがとうございます」
「付けてみてよ」
私は頷き、ケースから取り出した。
金具を外しつけようとするが、さっきのシートベルトといい何故か今日はうまく出来ない。
まごまごしていると向かいの席にいた基紀さんが回り込んできてつけてくれた。
彼の冷たい手が首に当たりヒヤッとする。
思わず首をすくめてしまった。
「ごめん。俺の手、冷たかったよな」
「ううん、びっくりしただけで冷たくて気持ちよかったです」
「え?あぁ。そうか」
なんだか顔が赤くなったように見える基紀さんはネックレスをつけてくれまた向かいの席へ戻った。
暖簾も何屋かわからず端に小さく“橘”とだけ書かれていた。
木の温もりがあり、とてもおしゃれだが中に入ると一見して寿司屋さんとはわからない。趣のある渡り廊下を通ると両脇に玉砂利が敷いてあり、間接照明で照らされている。私たちはプライベートが守られる半個室へと案内された。
個室は隣との境には簾がかかっており、声は多少漏れるが姿は見えない。照明も和紙で出来た照明で灯りが柔らかく温かみがあった。
「すごく素敵なお店ですね」
「良かった」
「なんだか温かみのある落ち着くお店ですね」
「そう?味もおいしいんだ。昨日イタリアから帰国したから日本食が恋しくてさ。だから紗夜ちゃんにパン以外と言われホッとしたよ」
「イタリアですか?」
「そう。2週間の視察と仕事の打ち合わせでさ」
最近見かけなかったのは出張だったってことなのね。
莉奈ちゃんとの件で来なくなったのではないかと思ったから私は少し安心した。
「今日休みだったんだね。図書館で見かけないから声をかけたら休みって言われたよ」
「今週夏休みなんです。だから友達と買い物に行ってきたんです」
「だから両手一杯の荷物なんだね」
私の荷物を思い出し基紀さんはクスクス笑う。
「女の子はみんな買い物が好きですからね」
私は先程の紙袋の量を見られ少し恥ずかしくなり肩をすぼめた。
「確かに、みんな好きだよな。荷物の多い人がいる、と思ってふと見たら紗夜ちゃんでさ。見つけられて良かったよ。ま、見つけられなくても家に帰ったらメッセージを送ろうと思ってたんだけどさ」
コトン、と机の紙袋が置かれた。
「イタリアのお土産だよ」
「私に?ありがとうございます」
中を見てみるといくつか小箱が入っている。
開けてみると一つ目は陶器のベルが入っていた。
「それは幸運を招くベルだよ。鳴らすと幸運が訪れるって言われている。紗夜ちゃんに今より更に幸運がくるように、と思って」
鳴らしてみると柔らかい音がしていて心地いい響きがする。陶器に描かれているデザインも可愛い。なにより私の幸せを祈って、だなんて言われて嬉しいけどその言葉に恥ずかしくなった。さらりとこんなことを言えてしまう基紀さんはやはり海外生活が長いからなのかな。
他にはレモンのシロップの瓶も入っていた。
最後に小さな小箱を開けてみるとベネチアンガラスで出来たネックレスが入っていた。
小ぶりでどんな服にも合いそう。赤に見えていたが角度を変えると緑に見えたり黄色に見えたりと表情を変える素敵なネックレスで一目で気に入ってしまった。
「すごく素敵です。ありがとうございます」
「付けてみてよ」
私は頷き、ケースから取り出した。
金具を外しつけようとするが、さっきのシートベルトといい何故か今日はうまく出来ない。
まごまごしていると向かいの席にいた基紀さんが回り込んできてつけてくれた。
彼の冷たい手が首に当たりヒヤッとする。
思わず首をすくめてしまった。
「ごめん。俺の手、冷たかったよな」
「ううん、びっくりしただけで冷たくて気持ちよかったです」
「え?あぁ。そうか」
なんだか顔が赤くなったように見える基紀さんはネックレスをつけてくれまた向かいの席へ戻った。