図書館司書に溺愛を捧ぐ

波乱

今日は水曜日、花火に行く約束をしている日。
夕方から待ち合わせだけどお昼の今からすでに緊張気味。

月曜日、基紀さんと別れ家に帰った後あずさにメッセージを送った。
たまたま駅で会い食事に行ったこと、お土産をもらったこと、付き合ってる人がいないことなど報告するとすぐに既読が付き電話が来た。

『紗夜!ビックリしたよ。あの後もう少し一緒にいたら駅で会えたのに残念。』

『そうだね』

『彼女いなかったんだね。ちょっと安心した。それにお土産買ってきてくれるなんて関係性が近いよね。お菓子じゃないところに好感が持てる』

『そっか』

『花火大会行くの?良かったね』

『うん。仕事の後一緒に行かないかって誘われたの。でも幼馴染としてだと思う。私がそう言ったけど否定しなかったし』

『そんなの覆してやればいいよ。妹じゃなく、もう女なんだって浴衣を着てアピールしたらいいじゃない。紗夜は好きなんでしょ?』

『好き、だと思う』

『ならその気持ちを大事にしてあげて。自分を認めてあげて』

『うん……』

『紗夜の初恋でしょ?頑張ろうよ』

『うん』

『水曜は浴衣着てくんだよ。花火と言ったら浴衣は欠かせないんだからね』

『う、うん』

あずさに押し切られるように浴衣を着ることを約束させられ、また報告するよう言われ電話を切った。

浴衣なんて子供の頃以来。お母さんが小学生の頃着せてくれたけどそれ以来着ていないよ。

でもあずさが言うように頑張りたいって思った。頑張って幼馴染から抜け出せないなら仕方ないけど頑張らないままで後悔はしたくないと思った。こんな前向きになれるなんて自分でも驚いている。あずさが背中を押してくれなかったらいつまでも動かずに何もしないで諦めていたと思う。

私は翌日浴衣を買いに出かけた。
お兄ちゃんの隣で少しでも胸を張って歩けるように、と悩みに悩んだ結果やっと決めることができた。
紺地に白とピンクで百合の柄が描かれた落ち着いた雰囲気の中にも可愛らしさがあるものでこれなら私でも着れそうと思った。帯は薄紫で髪飾りも同じ色を選んだ。
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