図書館司書に溺愛を捧ぐ
水曜日。
15時を過ぎ準備を始めた。
いつも1つに結んでいるだけの髪の毛をサイドは編み込みにし、後ろでアップにまとめた。
何度かやり直しをしたが、なんとかまとめることができた。
化粧をし、浴衣に着替えるがこれもまごついてしまい胸元がきっちりとしない。
ドタバタと2階でしていたらドアをノックされた。

「何やってるのよ」

返事を待たずに扉を開け、お母さんが入ってきてしまった。 

「あら、紗夜。浴衣着るの?そう言えば今日花火大会ね」

「うん……」

「襟元が緩んでるわ。まずは紐できちんと止めないから緩んでくるのよ。やり直してあげるわ」

楽しそうに私の帯を緩め、また最初からやり直してくれる。
紐の位置ときつさが絶妙できついのに苦しくない。
あっという間に着付けが終わってしまった。
私は散々手こずったのにお母さんは手際よく、帯も可愛くなっていた。

「ありがとう」

「駅まで送って行こうか?」

「大丈夫。まだ時間に余裕があるし遠くないから」

誰と行くの?とは決して聞いてこないが親だから私の姿を見て思うところはあるのだろう。

「遅くなるようなら連絡しなさいね」

そう言って部屋から出て行った。
お母さんの言葉にちょっと恥ずかしくなったが何も言わないでくれたことが嬉しかった。

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