図書館司書に溺愛を捧ぐ
待ち合わせは17時半。
でも家にいても落ち着かなくて早々に17時に家を出た。

一歩住宅街を抜けると浴衣を着た人を多く見かけた。

カップルで浴衣を着ていて手を繋ぎながら駅へ向かうのを後ろからドキドキしながら見ていた。

今までなら気にもしていなかったカップルの存在。
2人で浴衣を着て歩くなんて素敵。これから2人で海へ行き花火を眺めるのかな、なんて想像するだけで他人のことなのに胸が高鳴った。

私はカップルを眺めながら駅へ向かった。
待ち合わせは改札の横のコンビニ前。

今日は花火大会だからか待ち合わせも多く、人がごった返していた。

約束の時間まであと5分。
私は周りを見渡すがまだきていない。
その間にも待ち合わせて会えた人たちは駅の中に吸い込まれていった。

「花沢さんじゃないの?」

ふと声のした方を振り向くと浴衣を着た4人の女子が立っていた。
誰だろう、と思うと同時に記憶が蘇ってきた。

小学校の頃の同級生だ……。

中学から私立に行ったのでうろ覚えだが声をかけてきた子には見覚えがあった。
私に何かと言ってきた子だった。

「久しぶり。元気?」

4人は近づいてきて声をかけてきた。
私はその姿を見て固まってしまい、返事ができなかった。

「花沢さんじゃないの?」

また声をかけてくるが一向に動けない。

「なんか見た目違うけどあの頃のまんまだね。言いたいことわからないし、何考えてるのかもわかんないしね。」

笑いながら4人が私を囲むが、それが恐ろしくて益々萎縮してしまった。

「そんなにおしゃれして彼氏でもいるの?ねえ。久しぶりの再会なんだから何か言えないの?」

私は俯き返事ができない。
彼女たちに悪意があるわけではないのかもしれないがみんなに囲まれすぐに返答を迫られることが私にとっては苦手以外のなにものでも無い。
大人になりだいぶ慣れたとは思っていたが、それとは違った怖さを感じた。

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