図書館司書に溺愛を捧ぐ
私が動けずに一方的に彼女たちに囲まれていると私の手を引き腕の中に入れ抱きしめてくれる人がいた。

耳元で「大丈夫だよ」と囁く声が聞こえる。
基紀さんだ……。

「君たち紗夜の友達?でも俺見たことないなぁ。こんなブスなら忘れないのに」

今なんて言った?

私は抱きしめられ腕の中にいるから彼女たちの顔は見えない。

ワンテンポ遅れて4人の声が聞こえてきた。

「はぁ?誰この人」

「君たちこそ誰?」

「花沢さんの同級生ですけど」

「そうは見えないけど。紗夜の友達ならこんな様子の紗夜をなんとも思わないはずないだろ。お前らどこに目をつけてんの?迷惑だってわかんない?」

4人は押し黙る。
ふと抱きしめられた隙間から見ると周りの人たちが私たちに注目し始めてるのがわかる。

まだ言い足りないのかさらに基紀さんは4人に言い寄る。

「あのさぁ、あんたたち今この状況でよってたかっていじめ?この歳になってもまだこんなことしてんの?恥ずかしくない?嫌がってるのを見てわからない?いじめてるつもりはないとか言うなよ。嫌がってるのを分かっててやるんだかられっきとしたいじめなんだよ。いじめじゃないと思うなら周りに聞いてみろよ。お前らが絡んでるところみんな見てたぞ」

「そんな……」

「いじめてるつもりがないなら正々堂々としてろよ」

「紗夜、俺たちはもう行こう」

他人に顔が見られないように私のことを気遣いながら肩を抱き歩かされる。

耳元で小さな声が聞こえてきた。

「ごめんな、遅くなったからあんなのに絡まれちゃって」

私は声が出ず、首を振る。

「小学校の頃もあいつらだろ?底意地の悪そうな顔してた」

私は残された4人がどうなってるのか気になるが振り向こうとも思えない。
 
肩を抱かれたまま駅のホームの端まで連れて行かれた。

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