図書館司書に溺愛を捧ぐ
花火の上がる音が聞こえてきた。
タオルを外すと目の前に花火が上がっているのが見えた。

「すごい」

私は窓際に近寄ると基紀さんは窓を開けてくれ、ベランダへ出ようと声をかけてくれた。

こんな目の前で観れるならここで観た方が良かったんじゃないかな?と思うほどによく見える。

「ここで見えるのは分かっていたけど部屋に誘うのはどうなんだろう、と思ってさ。だから会場に行こうと思ってたんだ。結果、良くも悪くもここに誘うことになったよ」

そっか。
最初から家に誘われたら私固まってたかも。

「今ビール持ってくるからここで飲みながら見ないか?」

「うん」

少しだけ広めのベランダに2人で並び、缶ビールをカチンと合わせる。

こんな高いところから見る花火は初めて。
距離こそ少しあるが、それでも十分満足なほどによく見えた。混んでないし、こんな高さから見れるなんてとても贅沢に思えた。

花火大会はいつも行ったとしても友達か家族としか行ったことがなかった。
異性と見るなんて初めてだけど、基紀さんはあまりに自然と私の隣にいるから違和感がなくて不思議だった。

「紗夜ちゃん、胃に悪いし何か食べない?と言ってもつまみしかないから後で夜ご飯は食べに出よう」

そういうとキッチンに戻りゴソゴソと何か探し始めた。
しばらくするとたこ焼きを持ってきてくれた。

「冷凍たこ焼きがあったよ。屋台みたいじゃない?あとはポテトチップしかなくてさ。ごめん」

「ううん。たこ焼き食べられるなんて嬉しい。それに急にお邪魔しちゃってごめんなさい」

私は改めて頭を下げた。
あんなことがあったとはいえ急にお邪魔することになり申し訳なかった。

「いや。本当にマンションで見ないかと誘おうか悩んでたんだ。だから来てもらうのは全然いいんだ。紗夜ちゃんがよければ、さ」

「初めから言われたら正直悩んでたかも。でも今は来させてもらって良かった。こんな顔じゃ歩けないしね」

「なら良かったよ。多分後30分くらいで終わるだろうからもう少し見ようか」

そういうとまた並んでビールを片手に花火を見た。
こんな楽しみ方もあるんだなって初めて知った。
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