図書館司書に溺愛を捧ぐ
「基紀さん。私も基紀さんのことが気になって仕方ないです。正直なところ恋愛をしてこなかったからこれが好きなのかどうかはわからなくて。でも一緒にいると楽しいし嬉しくなります」

「うん」

「基紀さんが図書館に来なくなって、気になって仕方なかった。でもどうしてこないの?とは聞けなかった。メッセージさえ送っていいのかわからなかった。迷惑だって言われたらどうしようと思うと怖くなって」

「俺もだよ。紗夜ちゃんが何してるのか気になってた。紗夜ちゃんが俺を幼馴染のお兄ちゃんと思ってるのにこんなこと言って関係が崩れたら、もう2度と話せなくなったらと思うとなかなか一歩踏み出せなかった」

基紀さんはブランコを強く漕ぎ始めた。
私は浴衣なので座ったままその姿を見つめていた。

「でもさ、さっきあいつらに絡まれてるのを見て俺が守ってあげたいって強く思ったんだ。そのためには俺が一歩踏み出さないといつまで経っても守れないって気がついたんだ」

「うん」

「紗夜ちゃんといつでも会いたいし話したい、一緒にいたいから俺と付き合ってくれないか?」

「うん」

「へぇ?」

基紀さんが付き合ってって言うのを聞いて嬉しくなり返事をした、つもりだった。
けど基紀さんからは素っ頓狂な返事が返ってきた。
基紀さんはブランコを止め私の前に跪き、膝の上にあった手に自分の手を重ねてきた。

「紗夜ちゃん、俺と付き合ってくれるの?」

私を見つめてくる目を正面に見ながら頷いた。

「基紀さんは本当に私でいいの?」

「紗夜ちゃんがいい」

即座に返事を返してくれる基紀さんの様子に私の胸の奥はギュッと締め付けられた。
基紀さんの手はちょっとだけ冷たくて、こんなに格好良くて、何もかも持っているような基紀さんが緊張してる?
でも私もすごく緊張してる。

「基紀さん、私と付き合ってください」

「ありがとう、紗夜ちゃん」

私の手に重ねされていた手をギュッと握られた。

基紀さんの大きな手に包まれドキドキする。でも何度も何度も撫でられたこの手に包まれ安心感がある。

「私、基紀さんの手が好きです」

「手だけじゃなく他も好きになってもらえるよう頑張るよ」

笑いながら返してきた基紀さんの言葉に私は慌ててしまう。

「手だけじゃないんです。基紀さんが好きだけど、でもいつも頭を撫でてくれていたこの手は特別っていうか」

「分かってるよ」

その言葉を聞き私はまたキュンと胸が疼いた。
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