図書館司書に溺愛を捧ぐ
キッチンにおりるとお母さんがリビングにいた。

「お母さん、お菓子作ってもいい?」

「いいわよー。何にするの?」

「あずさにまた会うことになったからスノーボール作ろうかなって」

「あら、久しぶりじゃない?お母さんも食べたいわ」

「分かった。多めに作るね」

私は気分転換にお菓子を作るのが趣味。
最近だとタルトにハマっていてよく作っていたがスノーボールは久しぶり。
アーモンドプードルがないことに気がつきスーパーへ行った。

スーパーからの帰り道、家のそばで昨日絡んできた同級生に偶然出くわしてしまった。
逃げようと思ったけど足が竦んで動かず立ち止まってしまった。

すると向こうから近寄って来た。

「花沢さん。今いい?」

そう言われても嫌とは言えない。それに動けない。

「昨日はごめんなさい。ついみんなと一緒にあなたに絡んでしまったわ。あの彼の言う通り。今も私と話したくないってことは見てわかるのに私は花沢さんに不躾な態度をとってしまった。もう分別のつかない子供でもないのに本当にごめんなさい。」

私は首を横に振った。
言葉は出ないけど謝ってくれた事でもう十分。

「花沢さんは昔からおとなしかったからついからかってしまったの。今思えばよくないことだって分かった。なのにまた同じことをしてしまったわ。言い返せないと分かってるのにするのは良くない。私のこと怖いよね。本当にごめんなさい」

「怖いです。でもこうして謝るために声をかけてくれてありがとう」

「もしこれから、調子のいいことだけど私のことが怖くなくなる日が来たら話しかけてくれるかな。私は花沢さんと話してみたいなって思うの。花沢さんが他の人と話してるのを見かけたことがあるの。その時は普通に笑って話してた。だから気を許した人には話せるんだろうなって思ったの。でもこればかりは私がまた押しつけるわけにはいかない。もしもこれから先、私と話してもいいと思える日が来て、たまたま会ったら声をかけてね。私、これからは自分の意思をきちんと持って生きていきたいと思ったから」

まだ怖いけどこんなふうに言ってもらえると思わなかった。
この人の名前さえすぐに出てこない。
えっと…たしか…武田さんだ。

「武田さん。今すぐは無理だけど、将来いつかそんな日が来たらいいなと思う。話しかけてくれてありがとう」

「ううん。足を止めてごめんね。またね」

私は頷いた。
彼女に会って昨日のことも今までのこともフラッシュバックしすごく怖かった。でもこうして謝ってくれてホッとした。もう彼女に絡まれないんだと思ったら安堵した。
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