図書館司書に溺愛を捧ぐ
翌日、ランチの時間であろう時間帯に待ち合わせの連絡が来た。
今のところ18時半には終わりそうだということで19時に基紀さんの職場の近くまで迎えに行くことにした。
30分くらい電車に乗るだけだから近いのに気を遣って迎えに来てくれるという。
迎えに来てもらってからレストランに移動するのは時間がもったいないと思い、私は職場近くまで迎えに行くと伝えた。

少し早めに家を出て、余裕を持って職場近くまで行くと少しだけ遅くなるかもしれないと連絡が入った。向かいにあるカフェで待っていて欲しいと言われ、私は言われたカフェに入り窓から基紀さんの会社が入るオフィスビルを眺めていた。

すごいなぁ、こんな素敵なところで働いてるなんてカッコいいなぁ。
ビルから出てくる人は男の人も女の人もみんな溌剌としているように見える。
女の人はテレビで見るようなスーツを着こなしヒールを履き、背筋を伸ばして歩いている。
私のように普段着ではなくエプロンもつけていない。
司書であることを卑下している訳ではないが、なんとなくこんな女性たちをみていると気後れしてしまう。
そう思いながら見とれていると、基紀さんがビルから出てきた。
隣にはグレーのスーツを着て髪型はアップスタイル、ヒールも高そうなものを履きこなしている。彼女と笑い合いながら会社から出てくる姿はお似合いとしか言いようがなかった。
彼女は時折基紀さんを見つめ、腕を掴んで話している。それを基紀さんも拒むことなく掴まれたまま話している。ビルのエントランスで笑い合う姿はとても自然でここまで笑い声が聞こえてきそうな気さえした。

なんてお似合いなんだろう……

私も今日はデートだと思ってそれなりの格好はしてきたつもりだった。
でも全然違った。
基紀さんの隣に並ぶのはああいう人だ。
きっとお互いを尊敬しあえる対等な関係、そんなふうに見えた。
今の私たちは対等じゃない。
基紀さんの背中におぶさっているだけだと思った。
そう思えば思うほどに私の自信はなくなって言った。
私を好きだと言ってくれた基紀さんの言葉を踏みにじるなとあずさは言ってくれたけど、今のあの彼女を見て私はふさわしくないと思わざるを得なかった。
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