図書館司書に溺愛を捧ぐ
気がつくとそばまで来ていて跪いて私の手を握っていた。

「この2年、君の頑張りはすごかったよ。ハラハラさせられることもあったけど周りの人ともこんなに上手くやれるようになって、それはそれでハラハラしたけど君の成長をそばで見てきた。そろそろ俺の元に帰ってきてくれないか?」

「見てきた?」

「あぁ、暇さえあれば図書館に行き読み聞かせやイベントも見てきたよ。とても表情が豊かになり想像力を掻き立てられるようなしぐさで魅力的だった。だからいつも満席だよな。イベントも親が家でやるのは大変だけどここでなら、っていうものが多くてみんな喜んでいたと思う。年齢に合わせたイベントはどれも成功だと思う」

「どうして?どうして知ってるの?見て来たって何?」

何が何だかよくわからなくて質問をするが涙声になってしまう。

「俺は君に見えないところで見続けてきたよ。でもそろそろ俺も限界。他の人に取られるんじゃないかと不安で仕方ない。もう俺の元に戻ってきてくれ」

「基紀さん……」

私を見守り続けていてくれたの?あれから2年もの間?
私は月に1回あるかないかだと思っていたけどもっと図書館に来ていたなんて。
私のことを見守っていてくれたと聞いて胸が張り裂けそうだった。

「紗夜ちゃん。俺は変わらず君が好きだよ。君の努力や優しさに触れ、ますます好きが募っている。俺のことをまた見て欲しい。俺を隣に立たせて欲しい」

「わ、私も基紀さんが変わらず好き。あの時と同じようにあなたの隣に立てる人になりたくて頑張ってきた」

涙で声を震わせながら私の想いを口にするが、上手く出てこない。
涙はとめどなく流れ手が震えてくる。

「基紀さんのそばにいたい」

それだけ言うとぎゅっと抱きしめられた。
耳元で聞こえる彼の鼓動はとても早く、でもこんなに近くで聞くとなんだか安心する音だった。彼の鼓動を感じられるくらいそばにいると思うと私はこの2年を思い嗚咽が漏れるくらいに泣いてしまった。

やっとここに帰ってこれた……。

「紗夜ちゃん、愛してる」

基紀さんは私に聞こえる聞こえないかのかすかな囁きだがそう言ってくれた。
そして泣いてばかりの私の目元にキスを落としてくれた。
前にもこんなことがあった。
でもあの時とは想いの量が違う。
宥めるようにキスを落としていたが、最後口元まで降りてきた。
基紀さんの温かく柔らかい唇が私の唇に重なった。
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