苺にはもうなれない

「大丈夫ですよ」
優大くんがそう言って、私の手を掴んだ。






「ちょっと来てください」


リビングを出て、2階に上がる。

廊下を進んで奥の部屋に入った優大くんに、私も続く。


「オレの部屋にようこそ!」
優大くんが楽しそうな笑顔を見せた。


「わぁっ、キレイな部屋ですね」
そしてやっぱりオシャレな部屋だと思った。

深い青色のベッドカバーも。

ベッドのそばにある間接照明も。

床に敷かれたラグマットも。

ココア色の勉強机も。


優大くんらしい。


優大くんの東京の部屋もそうだけど、この部屋も爽やかな良い香りがする。


思わず呼吸が深くなりそう。





「あ、写真」
本棚に飾られている写真立てに、小さな優大くんを見つけた。

小学生くらいかな?


優大くんと並んで写っているのは、多分……。


「弟の蒼大と撮った写真です」
優大くんが手に取り、私に渡してくれた。

小さなふたりが楽しそうに笑っている。

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