【完】好きだからそばにいるんだよ
「すいません、マイクお返しします」





『は、はい。え、どちらへ!?』







マイクを返した白矢は日和の手を引いて、ステージをおりた。そしてそのままどこかへ行ってしまう。






桐斗たちはそんな状況に呆然としていた。






「おいおいまじかよ」






「愛の逃避行ですな〜。ねぇ矢島さん」






「羨ましい....」





自分もやられたいなと思う木乃実。じーっと桐斗を見つめ始める。






『で、では次の方どうぞ!』







体育館では引き続き、大会が続行された。









その頃、途中で退場した日和と白矢は校舎裏まで来ていた。







「はぁはぁ。白矢くんそろそろ限界....」






「ごめん。そこで休もうか」






「私、水買ってくるね」






日和と白矢が立ち止まった場所は校舎裏にある、自動販売機の近く。






日和はそこで水を2本買って、1本を白矢に渡した。





「ありがとう」




日和は水を白矢に渡して自販機近くの階段に座って水を飲もうとしたその時、隣に座るかと思った白矢が後ろに座り、両腕を日和の肩を抱きしめるような形で組み、顎を頭の上に置いた。










白矢くんが近い...!心臓のドキドキが伝わりそう。ていうか、この状態を見られたら私、恥ずかしさで爆発しちゃうよ...!








水を飲もうとした日和だったが、ペットボトルのキャップを開けられないほど緊張し始めた。







「なぁ。なんで、この大会に参加したんだ?」







「え、えーと。将流くんがクラスの皆と頑張って開催した大会だから、私はその力になりたいって思って。カフェでの接客は将流くんが皆に教えたんだって。凄いよね」







「お人好し」







どきっ...!







白矢にズバリ図星のことを言われて何も言い返せなくなる日和。






「もう1つ聞いていいか?」







「何?」






白矢が話すたびに、動く口の振動が日和に伝わり、少しくすぐったくなる。







「あの時、何を俺に言いたかったんだ?今は俺しかいないから聞きたい」







白矢は日和が言おうとしたことは自分だけ聞きたかった。だから途中で日和が話すのを中断させたのだ。







「多分、日和が俺に言いたかったことは、俺しか聞きたくことだって分かっているから。だから聞かせて?」

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