winter love
ー会社ー

トントン
「失礼します。」

「早乙女さん、おはよう。」

「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」

「こちらへどうぞ。」

「ありがとうございます。」

トントン
「失礼致します。早乙女さんの付き添いの方がいらしています。」

「付き添いの方か。入ってもらって。」

付き添いなんて誰にも頼んでないけど?
誰?

「失礼します。」

「えっ??」

錬?どういうこと??

「初めまして。速水と申します。彩奈さんの付き添いとして、同席させていただきます。」

「よろしく。いやー、付き添いの方がいるとは知らずに話を始める所だったよ。ごめんごめん。」

「僕が遅れてしまっただけなので。申し訳ありません。」

「大丈夫ですよ。
では、さっそく本題に。部下からも聞いていますが、今回は辛い思いをさせてしまって本当に申し訳ない。」

「い、いえ。私も悪かったのかもしれません。」

「彼女は優しいので、その優しさがいけなかったのかもしれません。」

「君の仕事ぶりや対人関係など、いろいろと話を聞かせて貰ったよ。いつも、我が社のためにありがとう。
今日は、これからのことで話をしようかと思うんだけど、早乙女さんはどうしたいかな?会社的には、君さえよければこれからも一緒に働いて欲しいと思ってるんだけど。どうかな?」

「私は・・・」

「彩奈、大丈夫!」

「うん。
私は、会社も仕事も好きです。でも、千島さんとのことはすごく怖くて。千島さんも会社にはなくてはならない存在だと思うので、
今日をもって退職をさせて頂きたいです。」

「そうか。考えは変わらないかな?」

「いろいろ考えましたが、今の私には今までのように、会社のために皆さんと力を合わせて仕事をすることが難しいと思いました。」

「早乙女さんの気持ちは分かりました。
失礼ですが、早乙女さんと速水さんのご関係は?」

「僕の婚約者です。」

えっ?今何て?

「僕の仕事がひと段落したら、入籍をしようと考えてます。」

「そうなんですね。それは安心だ。
早乙女さんが一人にならないか心配していたんですよ。心の支えになってくれる人が側にいてくれるなら、安心だね。よかった、よかった。」

錬の言葉にはいつも驚く。
けど、この会社も本当にいい会社だな。
辞めたくないけど、一歩前に踏み出したい。
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