目覚めたら初恋の人の妻だった。
昔、カズ君と姉のキスシーンを目撃してしまった私は暫く
”眠る”という当たり前の様に出来ていた事が出来なくなってしまった。
だけど、幼く、自分は少し賢いと奢っていた私は上手くその事を
隠せていると思っていた。
誰にも気がづかれていないと思っていたのに母にはバレバレだったようだ
奥手の私は性への目覚めも遅かったのに、初めて目の当たりにした性は
大好きな人のキスシーン。
それを悪夢が追い打ちをかける、うなされて何度も目覚める地獄の苦しみ
それでも疲れた体はウトウトと睡眠を欲し、僅かな転寝ですら
何度も何度も大好きな人と姉とのキスシーンの悪夢に苦しみ、
とうとう眠るのが怖くなった。怖くて寝ない様にカフェインを過剰に取ったり、
逆にヘトヘトになって眠れば夢など見ないと期待し、無駄に運動をした。
それでも、悪夢の方が勝った。
心も身体も疲弊した頃に母から長期休みのホームステイを提示され
逃げ出したい一心で縋ったのが良かった。
慣れない環境、戸惑う習慣、人間関係、言語。
悪夢を見る余裕すら無くなっていたし、意外と自分に合っていた。
2人の姿を見たくなくて、長期の休みに私が日本にいる事は無くなった。
だから2人がどう過ごしていたかは知らないし、聞きたくも無かった。
そうやって忘れたつもりだった・・・忘れたと思っていた。
先生と深いキスをするまでは・・・
あの時、先生の舌が私の歯列をなぞった瞬間、カズ君だったら・・と
思ってしまった事は罪だと思い、先生との事に集中しないと、と思えば
思う程カズ君の事が頭を占め始め消えなくなった。
お姉ちゃんとどんなキスをするのだろう?
先生みたいに蕩けた顔をするのだろうか?
そんな不埒な事を考えているのを繊細な先生が気がつかない訳が無いのに。
私は先生を残酷なやり方で傷つけていた。
折角、あの悪夢から解放されていたのに、先生との別れをきっかけに
私はあの時と同じ様に寝れなくなるのではと考え始め、ベッドに横になるのを避けた。