目覚めたら初恋の人の妻だった。


昨夜は遣り過ごせたが明日以降はどうすれば良いんだろうか?

そんな思いを抱きながらダイニングに向かうと、そこには今一番会いたくない
カズ君が居たが、視界に入っていないフリをした。
今はダメだ・・・今は感情がコントロールできる気がしない。
神様、私が先生にした罪をこういう形で罰を与えるんですね。
私の胸はバリバリと音を立てて破れる一歩手前だった。

姉との仲を見せつけられる そう持っていたのに、カズ君に何故か
スマホ1つ持たせてくれない状況で車に押し込められてしまった。
高校時代に学校の行事で来た事の有る絶叫マシンで有名な遊園地を
目の前にした時は単純に嬉しかった。
思いっきり叫び、実は絶叫系がカズ君は苦手だって事を知ったのも
密かに嬉しかった。
苦手なのに連れて来てくれた理由は解らないけれど単純に嬉しいんだ。

何でもないクレープやソフトクリームさえ今まで食べた中で一番
美味しく感じるのも、私が拗らせてしまった初恋のせいだと・・・

でも、ふとした瞬間に見せる瞳に翳りや、見た事の無い表情をしている様に
見えるのは気のせいだろうか?
冷静に考えると今の状況はおかしい。
カズ君の隣に居て良いのはお姉ちゃんだ。
本当はお姉ちゃんと来る予定だったのかもしれない。
でも、さっきはお姉ちゃんはスマホを見ていたし、カズ君の
休日まで~の言動はもしかして喧嘩中???
そう、思い付くと全て合点がいった。

仲直りで家に来た→お姉ちゃんが許さなかった→カズ君も腹が立った→
目の前に居た私を連れ出してヤキモチ妬かせる。

こんな構図だろうか・・・
そう考えると虚しさが胸を過ぎったが、昨日からの自分を考えると
それでも、今この瞬間は先生の事を考えなくて済んだ事に感謝した。
”お互い様” だから私はカズ君に罪悪感を持たなくても良いんだ。と
自分を納得させた。


その日、次は何処に行くか何故か約束してから別れた。
多分、それはこの場の雰囲気に流されただけ・・・次回が有るとは
期待していなかった。
その日は疲れと高揚感で眠る事が出来たけれど、翌日から私は負のループに
完全に嵌り、殆ど眠れないで過ごした。
母は食事も満足に取らず、目の下に隈を作って大学に行く娘を心底心配気な
顔を見せているが、私も中学2年の時の素直な子供を卒業していたし、
親に対する見栄もあったのかもしれない、その心配を口にさせる
隙を作らない様にしていた。

姉が私に、この間の件を聞いて来るかと緊張していたが、姉は全くもって
無関心な態度だった。
それは彼女としての余裕なのかもしれない・・そう思うと羨ましくて
切なくなったけれど、そう思う資格を私は持っていない。
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