目覚めたら初恋の人の妻だった。
「さっきも少し話したけれど柚菜が小学校高学年になった頃から
柚菜を異性として意識していたんだ。
気持ち悪いだろ?
中学生が小学校5年生を意識するって。
俺自身気持ち悪くて気のせいだと思った。自分の気持ちを否定したくて
その当時告白してくれた子とデートした事もある。
でも、違うんだ・・ドキドキしたり、イライラしたりしなくて。
香菜に抱く感情と同じなんだ 誰と居ても。
それより悪かったかもしれない。香菜は妹の意識が強くて他の女の子は
クラスメイトっていうか、ただの人? 名前も顔も全然覚えられなくて
他の男子に可愛い子と言われてる子さえ、どうでも良かった。」
あの頃、自分性癖が異常なのでは?と不安になり、女の子とデートした。
唇を重ねても何も感じない自分に辟易し、俺はロリコンなんだろうか?
と思い悩んだ事もあった。
でも、柚菜の友達を見ても何も感じなくてこの感情は
柚菜限定なんだと安心したものだ。
それが恋心だと気がつくのには未だ自分は未熟だった。
このドキドキはハラハラだと思い込もうとした時期もあった。
他の子とは明白に違う美しさ、そこに末っ子で桜華というお嬢様学校以外の
世界を知らない無邪気さが危うくみえ、庇護欲を掻き立てられているだけだと
思いたかったのかもしれない。
柚菜限定に起きる感情に安心する反面、余りにも家族同士が仲良くて、今後
どう接して良いのか戸惑い、悩み、苦悩したんだ。これでも
柚菜は当たり前だが、今までと何ら変わらない態度で接してくる、
その度にハラハラが止まらなくなってきた。
明応の学園祭が近づくとクラスメイトが口々に
「お前の幼馴染の柚菜ちゃんは今年も来るよな?」と
当たり前の様に馴れ馴れしく呼び、話題ににすることに、益々イライラが募った。
しかも柚菜が6年生の秋には
「柚菜ちゃんが明応に入学したらミス明応に選出。歴代で最年少のミス明応に
なるな!」
なんて話があちらこちらで囁かれ、明応に一緒に通うつもりだった
俺は焦った。
一緒に通うのは楽しみだがそれ以上にリスクが増える事の方が不安になり、
つい、柚菜の父親に少し誇張して明応での柚菜人気を話し、危機感を募らせ
そのまま桜華に通った方が柚菜は楽しい学戦生活を送れるなんて助言した。
おじさんが俺の意見なんかに左右される筈は無いのに・・・
きっと、最初から外部受験をさせるつもりは無かったと今なら解る。
そうとも知らずに誘導した気満々だった。
この頃から多分、俺の恋心はバレていたと思う。
近いが故に柚菜の情報は筒抜け、逆も真なり。俺の行動が筒抜けになってしまっている。
柚菜の父親は弁護士と言う職業上、他人に弱味を握られるのを嫌がる。だから
清廉潔白 Mr.クリーンと云われ、それゆえに政治家への転職も
示唆される事も多いと大人になってから知ったが納得できる。
柚菜に似て綺麗な顔立ちをしているから女性の誘いだってそれなりに
あるだろうが、そんな事に惑わされる事も無く、家族ファーストでいる。
とくに、自分にそっくりな柚菜を溺愛しているのは誰が見ても明らか
だから自分が恋心を抱いていると解った時から俺は襟首を正した。