目覚めたら初恋の人の妻だった。

私が通った幼稚園、小学校は俗に言う受験校。
系列で大学まではあるが付属では無くて小学校が一番の
難関校と呼ばれ、系列の中学校に進学する生徒は1割にも満たず、
私はカズ君の通っている明応中学を第一希望に死ぬほど勉強した。
勉強しすぎて、燃え尽き症候群のようになってしまったのは
仕方が無い事だけれど、後々を考えれば努力すべきだったと
今は後悔している。
私は明応では可もなく不可もなく無難に生きる一生徒でしかなかった。

幼かった私は同じ学校に通えば振り向いてくれると信じていた。

けれど同じ学校に通い始めたのに思う様に一緒には居られなかったのは
計算外で、小学生と中学生の変化の違いを理解していなかった
だけでは無く幼馴染のカズ君は外の世界では加瀬一那と言う青年だった。

2歳の差は学園では思いの外壁になり、しかもカズ君は部活に生徒会と
何かと多忙を極めている。
柚菜が明応に通うまで2年しか無い その2年でカズ君の心を自分に
振り向かせないと・・・そう思っていたのに思う様に事は進まなくて
焦りばかりが募っていく
すぐ後ろから柚菜に追いかけられている感にビクビクと怯えて過ごし
打開策を打てぬまま、悪戯に過ぎる時に焦り、とうとう私は狡いと知っていて
愚かにも柚菜を利用する一手を打った。

小学生の柚菜が通う桜華へは私が家を出るよりも少し早いのを
利用し途中まで一緒に登校しようと持ち掛けたのは
柚菜が5年生、私が中学1年の梅雨の頃。
どう言いくるめたかはもう、忘れてしまったが柚菜が断れない様に
必死に色々と口にしたのは覚えている。

全く会えないカズ君に焦れていた末の本当に愚かな行動だと少しして
気がつく。

案の定、カズ君はいつの間にかそこに加わって、当たり前の様に
柚菜の隣をキープする。

自分がカズ君と一緒に居たくて柚菜を利用したのに、カズ君が柚菜を
想っている事を再認識させられて涙する日々。
私が柚菜との登校を持ちかけたのに一緒に居るのに私の存在は
空気のようだった。

「柚菜、学校はどうだ?」
「柚菜、朝ご飯たべたか?」
「柚菜、困っている事はないか?」
「柚菜、柚菜、柚菜」
カズ君の口から呼ばれる名前は全て”ゆな”

それでも当時は柚菜の学校の最寄り駅から先は2人で通える悦びの方が
勝っていた。
これが続けばカズ君は私を見てくれると信じていた。
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