目覚めたら初恋の人の妻だった。
凡庸な私が大企業の就職戦線で勝ち抜ける訳もなく、何十社からの
お断りのメールを義務の様に開封し続けた。
父に頼めば・・・そう思わない訳では無かったけれど、柚菜との差を
父が余計感じてしまうのでは?
母にも柚菜にもその事が知れたら恥ずかしいと思い、地道にエントリシートを
送り続けた。
大企業は望んでいなかったけれど、譲れな事が一つだけあった
諦めきれない私はいずれカズ君が継承するであろう加瀬グループ本社ビル近くの
会社を希望している。
職種なんてどうでも良かった。
ただ、近くに居たかった。
その想いだけで今の会社に就職し学生時代からのパートナーとは別れ
職場で新しいパートナーと出会い付き合っている。
どうして同性としか付き合えないのか・・・それは多分、カズ君の隣に立つ事を
諦めきれていないから
初めてはカズ君以外は考えられないし考えたくもない
ファーストキスはカズ君、だから・・・・私の全ての初めてを捧げたかったし
喜んでくれる筈と思い込んでいた。
それなりに平穏に社会人生活をおくっていたけれど、期待していたように
オフィス街でバッタリ出くわすなんてドラマのようなシチュエーションには
ならなくて逢いたくて逢いたくて時折、カズ君の会社が一望出来るカフェに
陣取りその姿を確認していた、カズ君がこのカフェにふらりと立ち寄り、
私を見つけ新たに何かが始まるのを期待しながら
だけどそんな都合の良い夢物語は現実にはあり得ない
馬鹿みたいに夢を追いかけていたある日、父から柚菜がカズ君と結婚したと聞かされた。
大学卒業と同時に家出同然で挨拶もせず、報告もせず逃げる様に家を出た わたし。
母に、家を出る事を言えなかったのは、もしかしたら
全てを知られているのかもしれないと思う恐怖感
それは母から向けられる視線を敏感に感じ取っていたのかもしれない
そんな私は母はきっと失望しているに決まっている。
妹にはもっと言えなかった。
自分がしてきたみたいに私を蔑むように見られたら・・・
だから、父だけに家を出る事を話し、そっと22年間育った佐倉家を後にした。
色々な事を気にしない様に学生時代の友人とも距離を置き、
自分の見たい景色、話だけを耳にして過ごしていたのに
それでも朝食の席にカズ君が現れ、柚菜を何処かへ連れて行った日から
こんな日が何時か来ると何処かで解っていた。
それが思ったより早かった・・・あと数年先だったら私の想いも
昇華出来たのかもしれないのに、夢見るだけで幸せだった私の恋心は
父からの報告を受けてどうしても手に入れたい方向に再炎してしまった。
幸せを柚菜に奪われた・・・・だったら取り返しても良いよね?
何時の間にかそんな思考に支配され、それが真実だと。
全てを簡単に手に入れた柚菜に憎しみしか感じなくなり
私は姉として少し残っていた矜持をこの時に完全に放棄し、
カズ君の傍に居る未来をひたすら描く日常に傾斜していく
その先にある地獄に気がつかないふりをして。
お断りのメールを義務の様に開封し続けた。
父に頼めば・・・そう思わない訳では無かったけれど、柚菜との差を
父が余計感じてしまうのでは?
母にも柚菜にもその事が知れたら恥ずかしいと思い、地道にエントリシートを
送り続けた。
大企業は望んでいなかったけれど、譲れな事が一つだけあった
諦めきれない私はいずれカズ君が継承するであろう加瀬グループ本社ビル近くの
会社を希望している。
職種なんてどうでも良かった。
ただ、近くに居たかった。
その想いだけで今の会社に就職し学生時代からのパートナーとは別れ
職場で新しいパートナーと出会い付き合っている。
どうして同性としか付き合えないのか・・・それは多分、カズ君の隣に立つ事を
諦めきれていないから
初めてはカズ君以外は考えられないし考えたくもない
ファーストキスはカズ君、だから・・・・私の全ての初めてを捧げたかったし
喜んでくれる筈と思い込んでいた。
それなりに平穏に社会人生活をおくっていたけれど、期待していたように
オフィス街でバッタリ出くわすなんてドラマのようなシチュエーションには
ならなくて逢いたくて逢いたくて時折、カズ君の会社が一望出来るカフェに
陣取りその姿を確認していた、カズ君がこのカフェにふらりと立ち寄り、
私を見つけ新たに何かが始まるのを期待しながら
だけどそんな都合の良い夢物語は現実にはあり得ない
馬鹿みたいに夢を追いかけていたある日、父から柚菜がカズ君と結婚したと聞かされた。
大学卒業と同時に家出同然で挨拶もせず、報告もせず逃げる様に家を出た わたし。
母に、家を出る事を言えなかったのは、もしかしたら
全てを知られているのかもしれないと思う恐怖感
それは母から向けられる視線を敏感に感じ取っていたのかもしれない
そんな私は母はきっと失望しているに決まっている。
妹にはもっと言えなかった。
自分がしてきたみたいに私を蔑むように見られたら・・・
だから、父だけに家を出る事を話し、そっと22年間育った佐倉家を後にした。
色々な事を気にしない様に学生時代の友人とも距離を置き、
自分の見たい景色、話だけを耳にして過ごしていたのに
それでも朝食の席にカズ君が現れ、柚菜を何処かへ連れて行った日から
こんな日が何時か来ると何処かで解っていた。
それが思ったより早かった・・・あと数年先だったら私の想いも
昇華出来たのかもしれないのに、夢見るだけで幸せだった私の恋心は
父からの報告を受けてどうしても手に入れたい方向に再炎してしまった。
幸せを柚菜に奪われた・・・・だったら取り返しても良いよね?
何時の間にかそんな思考に支配され、それが真実だと。
全てを簡単に手に入れた柚菜に憎しみしか感じなくなり
私は姉として少し残っていた矜持をこの時に完全に放棄し、
カズ君の傍に居る未来をひたすら描く日常に傾斜していく
その先にある地獄に気がつかないふりをして。