STRAY CAT Ⅱ
「西澤……橘花は?」
「仕事」
「ああ、今一緒に花蔵で働いてるんだって?」
鞠と距離を置いて、3日。
12月29日。藍華に顔を出しに来たOBのみちるさんが、この場にいない鞠のことを聞いてくる。
「違うでしょ、恭くん。
鞠ちゃんといま距離置いてるんでしょ」
「……それは聞き捨てならねえな?」
リカが余計なこと言いやがった。
おかげで「喧嘩?」とみちるさんに聞かれる羽目になって、ため息をつく。喧嘩なんてロクにしたことねーよ、俺ら。ギスギスしてたのは再会した時だけだ。
「家にも頻繁に来て、仕事も行って。
あいつが実家で妹と過ごす時間も減ってるし、ちょっとお互いの時間を取り戻そうってだけだよ」
「ほんとにそれだけならいいけど。
お前ときどき空回って、橘花と上手くいかなくなるからなぁ……」
「………」
「ま、俺の口出すとこじゃねえし。
……あー、そういやスズさんが『鞠お嬢様、最近張り切っておられますよ』って言ってたな」
女の方がこういうメンタル強ぇよな、と。
俺にわざわざ伝えてくるこの人はただ揶揄ってんのか、何か言いたいのか、よくわかんねー。
「せっかくの年越しも一緒に過ごさねえ気か?」
「家族で過ごすって言ってた。
俺もどうせ年越しはここにいるしな」