STRAY CAT Ⅱ



「ねえねえ、おねえちゃん」



「うん?」



「恭ちゃん、こないの?」



「、」



流れるように丸をつけていた手が、思わず止まる。

「しばらく来ないと思うわ」と自分で言ったそれに、じくじくと心の中が痛む。



恭は、覚悟が足りないって言ってたけど。

そんなこと、無いのに。わたしと再び一緒にいようとしてくれたことも、最初に付き合ってた時に蒔やお母さんに優しくしてくれていたことも、誇れることだと思う。



自立しなきゃ、って。

恭は自分で自分に納得がいかないらしい。




「むー……」



ちらりと顔を上げれば、不服そうな蒔。

この間クリスマスプレゼントにもらっていたぬいぐるみを毎日大事に抱えて寝てることも知ってるし、恭のことが大好きなのも知ってる。



「会いたい?」



「ううん、いいー」



「……あら、いいの?」



「きょーちゃんしらないもん」



あ、拗ねちゃった。

恭が家に来るよりもわたしが恭の家に行く方が多いから、どうしても恭と蒔が顔を合わせるタイミングは減ってしまうわけで。



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