STRAY CAT Ⅱ
第1章 トラブル・デパーチャー
◆ Side Kyo
「……は?」
鞠がいつものように泊まりに来たその日。
くそ迷惑な方法で帰宅を知らせてきたウチの親。外が寒いせいでいつにも増して出不精な鞠と週末をゆっくり過ごそうと思っていたのに、予約してあるからという無茶ぶりで翌日は昼飯に連れ出された。
……かと思うと、唐突な母親からの発言。
思わずそう返したのは俺で、隣の鞠もキョトンとしてる。
「だからー、いつ結婚する?って。
ママはやく鞠ちゃんにお嫁に来て欲しいんだけど」
「俺らがまだ高校生なの忘れてね?」
「えー?別にいいじゃない。
ママ、高校在学中にパパと結婚したわよ」
いまさら補足する必要性はまったくないと思うが、ウチの母親はとんでもないことを言い出しがちで。
まあ人生楽しく生きてんだろうな、とは思うけど。
誰も彼もがそれに当てはまると思わないで欲しい。
「え、そうなんですか?」
「うん。パパの方がふたつ年上だから高2のときに。
まあ、わたしの場合はお腹に恭がいたんだけど」
いまの自分の歳で結婚も子どもができることも想像がつかない。
まだ鞠と付き合って間もないし、そりゃ大々的に婚約話も出してるくらいだから、いつかは結婚しようとは思ってるけど。
「結婚してどうやって養うんだよ。
俺も別に自分で稼いで暮らしてるわけじゃねーのに」
母親が何の努力もしてこなかったとは思ってない。
むしろ高校生の時点で、一般家庭育ちの母親が花蔵を背負うことになったのは、とんでもなく大変なことだったと思う。
今じゃ花蔵トップの敏腕営業ウーマンだけど。