STRAY CAT Ⅱ
第3章 クリスマス・ダイヤモンド
◆ Side Kyo
「あら、恭来てくれたの?」
「誰かさんに呼び出されたからな」
俺は病院が嫌いだ。
中学のときは保健室に入り浸ったりしてたものの、アレはみちるさんが養護教諭だったからで。例のバイクを細工されて怪我した時も、結局は病院に行かなかったくらいだ。
それくらい嫌いなんだから、顔を顰めるのも致し方ない。
個室の中で、俺の表情を見た紗七は「嫌そうね」と笑った。
「……大丈夫か?」
「うん、まあ、見たままの感じ?」
じいさんから直接電話が来たのが約20分前。
バイクを飛ばして来たけど、そんなに"緊急事態"なわけでもない。顔色悪いな、ぐらいのもので。
「入院?」
「まさか。点滴が終われば帰宅できるわよ」
「……俺呼ぶ必要あった?」
倒れたと聞いたから、少なからず心配はしていた。
鞠の母親の話も知っているし、苦虫を噛み潰したような感覚もずっとあった。……けれど来てみたら、案外何ともないし。
「うん、おじいちゃんが恭に送ってもらえって」
「は? 俺バイクだぞ」
「タクシー使っていいって。
家まで絶対送れよって言ってたけど」