STRAY CAT Ⅱ
本当は。
紗七のことも、巻き込まず早急に解決したかったのに。……ただの自己満足にさえならなかった。
「愛してる」
耳元で特別な言葉を囁けば、彼女はこくんと頷く。
その腕が当たり前のように俺の背に回される幸せを、離しはしないし離させる気もない。
「ねえ、どのくらい愛してる?」
鞠らしくない言葉にも、自然と口角が上がる。
どのくらい、か。……どのくらいなんだろーな、実際。付き合っていた期間も、別れてから復縁するまでの期間も、付き合ってからの今も考えたら、相当長いこと、俺は鞠だけ想ってるけど。
「いまお前と、はじめて出会う前に戻ったとしても。
……お前のこと速攻で好きになるんだろーな、って思うぐらい?」
最初に付き合う前、本当に惜しいことをした。
別れが来るなら、それでも、すこしでも長く一緒にいたかった。もっと早く付き合っておけばよかった。
……そんなことも、決して思わなかったわけじゃない。
頭ん中でいろんな思考が渦巻いて、別れるくらいなら最初から出会わなければよかったのにと真逆のことを思ったこともあるけど。
「じゃあわたしと一緒ね」
くすくすと。
笑った鞠がすこし背伸びしたかと思うと、ほんの一瞬触れ合うだけのキス。
「はじめから、ずっと恭のことが好きよ」
「……ん。知ってる」
余裕ぶった態度でそう言って、彼女を抱きしめる腕に力を込める。
しばらくそうやって身を寄せ合っていれば、鞠がふと何かを思い出したように俺を見上げた。
「メリークリスマス、恭」