ひみつというほどのことでもないこと。
「どうやったらバレないと思う?」
「クズでアホな先輩にできるアドバイスはありません」
「ひどい言い草だなぁ」
この最低な男が、もう浮気しないと決意する瞬間は来るのだろうか。
可愛い後輩としては気になるところである。
「もう時間じゃん」と言いながら慌てて着替え始める先輩から目線を外して、オムライスの続きを食べながら、以前、どこかで見た情報を伝える。
真実かどうかは知らないけれど、あながち間違っていないと思っている。
「女って、嘘を真実にしちゃうらしいですよ」
「どういうこと?」
「嘘でも、それが真実だって、自分で思い込むんです。自分さえも欺いちゃうからバレないって聞いたことあります」
「まじで?お前もそうなの?」
「さぁ?どうでしょうね」
着替え終わった先輩が、私を見ながら「女って怖いわ」と呟く。
真面目で一途な人間になれば、何も怖いことないと思う。
「いい加減、一途になれる相手と付き合うほうが懸命ですよ」
「え〜じゃあ、お前が付き合ってよ」
「いやですよ」
こんな人、好きじゃない。