俺の子を産めばいい~エリート外科医の愛を孕む極上初夜~

「お願い、早く……!」
「大丈夫、来たよ」


 祈るしかなく泣きそうになっていたとき、背後から誰かに肩を抱かれた。振り仰いだ瞬間、頼もしい人の姿が視界に飛び込んで目を見開く。


「り、つき……!?」
「声を上げてくれてありがとう」


 なぜかここに来ていた彼は落ち着いた声でそう言い、私をそっと朝美さんから離した。そしてすぐに彼女の状態を確認する。

 胸を痛がっているが反応はできるため、律貴が冷静に説明する。


「朝美、このままだと心筋梗塞に移行する可能性が高い。今すぐに手術したほうがいい」


 いまだに苦しそうな彼女は、すがるように律貴を見上げて頷いた。

 声をかけながらてきぱきと対処する彼を、私は放心状態で眺めることしかできない。直後に看護師も数人やってきて、中庭が一気に騒然とする。

 カテーテル室へ運ぶよう律貴が指示し、それに従い朝美さんを乗せたストレッチャーは院内へ向かっていく。これでひとまず安心だと、身体の力が抜けた。


「よかった……。律貴、絶対彼女を──」


〝救ってね〟と言おうとしたところで、こちらに身体を向けた彼にぐっと両腕を掴まれる。驚いた私は口をつぐんだ。
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