俺の子を産めばいい~エリート外科医の愛を孕む極上初夜~

 唇を結ぼうとしてもだらしなく緩んでしまい、ああ、俺嬉しいんだなと実感する。約四年の片想いが報われそうなのだ、喜ばずにはいられない。

 より子が帰ってきたら惜しみなく愛を伝えて、たくさん抱きしめてキスをしよう。もう二度と不安にさせないように。

 高揚する気持ちを持て余し、しばし部屋中をウロウロする。落ち着いてから再びソファに座り、深く息を吐き出した。

 当直明けだというのに、これでは眠れそうにない。すっかり目が冴えてしまったなと思いつつ、テーブルの上に出しっぱなしになっていた血圧計をなにげなく見やる。

 電源が入りっぱなしになっていると気づいた瞬間、表示されていた数値に目を疑った。


「百六十二……!?」


 上が百六十二で、下が百五。収縮期血圧が百四十mmhgを超えると妊娠高血圧症候群と診断される。百六十mmhg以上は重症だ。

 これに気づかなかったのか? 俺が帰ってきたとき、より子は上の空のような調子だったし、きちんと見ていなかったのかもしれない。

 今はまだ妊娠七カ月、この時期に発症するのは危険だ。母体に重篤な合併症が引き起こされたり、赤ちゃんの発育に影響が出たり……最悪の場合は、ふたりとも死に至る可能性もある。
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