俺の子を産めばいい~エリート外科医の愛を孕む極上初夜~

 早口でそれを伝えると、より子は信じられないといった様子で呆然とする。

 彼女だって危険な状態で、本来ならそばについていてやるべきだろうし、俺もそうしたい。だが、今優先すべきなのは朝美だ。

 もどかしさを覚えるも、彼女の膨らんだ腹にそっと手を当て、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「オペが終わったらすぐに俺も行く。それまで、この子を頼む」


 より子も、赤ちゃんも、どうか無事に出産まで漕ぎつけてほしい。

 しっかりと伝えて目を合わせたあと、その場から走り出した。更衣室に駆け込んで素早く着替え、心臓カテーテル室へ向かう。

 半円を描くような大きな装置と、モニターが複数台ある心カテ室。朝美が待つそこに手を洗って入ろうとしたとき、「栄先生!」と呼び止められた。

 ひとりの女性看護師が、切迫した表情で告げる。


「今、待合で奥様の具合が悪くなられたと……産婦人科で処置を受けるそうです」


 ドクン、と心臓が重い音を立てた。

 一瞬、頭の中がより子の姿で埋め尽くされ、不安が煙のように広がっていく。
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