俺の子を産めばいい~エリート外科医の愛を孕む極上初夜~

 朝美さんも、また新しい生活が始められるんだ。考え方が変わったと言っていたし、彼女のこれからの人生がさらに素敵なものになることを心から願う。

 ところが、とてもいい報告をしたというのに、律貴の表情はなぜか冴えない。


「……ごめん。より子も不安で仕方なかっただろうに、ついていてやれなくて」


 謝る必要なんてないのに申し訳なさそうにまつ毛を伏せるので、私は慌てて首を横に振る。


「朝美さんのほうが一刻を争う状態だったんだもの、当然じゃない」
「医者としての判断は正しかったと思う。でも、夫としてはどうなんだろうな。より子がつらいときにそばにいてやれなかったのが悔しい」


 ぽつりとこぼれた本音に、胸が苦しくなった。そこまで私のことを想ってくれていたのかと、驚くと同時に切なくもなる。

 彼にそんなふうに思わせてしまうのは嫌だ。医者としてだけじゃなく、旦那様としても自信を持ち続けていてほしくて、「……あのね」と口を開く。


「私が今まで付き合った人、皆記憶が薄れてるの。なのに、律貴と初めて話したときのことは鮮明に覚えてる。あなたが座っていた位置も、交わした言葉も全部。それくらいあの瞬間に強く意識して、医者としてのあなたを尊敬したんだと思う」
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