俺の子を産めばいい~エリート外科医の愛を孕む極上初夜~
ブーケを持つ冷たくなった私の手を、彼の大きな両手がそっと包み込む。
「俺と一緒になって。より子」
彼の手と瞳の温かさに、ふいに泣きそうになった。
このプロポーズは愛しているからではない。子作りのために結婚したいという目的が一致しただけ。
そう考えると、どうしてか胸が痛んでぎゅっと苦しくなる。願ってもない話で嬉しいはずなのに、単純に喜べない。
でも私はずっとそれを望んでいて、申し分のない相手が目の前にいる。栄先生は意地悪だけれど気心知れた唯一の異性だし、なんだかんだで尊敬も信頼もしている人。
この機会を逃したら、子供に恵まれる次のチャンスはそうそう巡ってこないのは明らかだ。この手を取らない選択肢はない。
複雑な感情が入り交じってざわめく胸を抑え、意を決する。答えを待っている彼の顔を一度見つめてから、「よろしくお願いします」と頭を下げた。
ああ、承諾してしまった……これから私、この人の妻になるんだ。
顔を上げると安堵したように微笑む彼が視界に映る。その柔らかな表情は、腹黒い笑みでも王子様スマイルでもない、彼の心からのものに見える。
それに感化されたのか私にもやっぱり喜びが広がってきて、照れ隠しで俯きながら、彼の手の下でブーケをきゅっと握りしめた。