俺の子を産めばいい~エリート外科医の愛を孕む極上初夜~
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栄 律貴の存在を知ったのは、彼が二十七歳の頃。私が司書を務めている、横浜駅にほど近い白愛総合病院の図書室で。
この図書室は患者やその家族が利用できるコーナーと、当院職員や研修医向けの医学専門書がずらりと並ぶコーナーに分かれている。
後期研修医だった栄先生は、一週間の半分以上は図書室にやってきて、ひとりで熱心に勉強をしていた。
ずっとそこにいるわけではなく、小一時間ほど机に向かっては慌ただしく出ていく。手術の合間を縫って来ているんだろうな、という感じだった。
初めて話したときのことは、今でも鮮明に覚えている。
夕日に照らされる中、閉館時間を過ぎているにもかかわらず窓際の席に座っていた彼は、目を閉じてなにかをぶつぶつ呟いていた。
テーブルに置かれたのはノートと分厚い書籍。手は、まるでメスを握っているかのごとく動かしている。
少し近づいて耳を済ませると、難しい用語が呪文のように聞こえてきてピンときた。
彼はきっと、今日立ち会った手術を復習しているのだ。執刀医のテクニックを思い出し、シミュレーションしながら。