俺の子を産めばいい~エリート外科医の愛を孕む極上初夜~
律貴は自分に二面性があるのを自覚しているので、こうやってからかって楽しんでいるのだ。私がまだ婚活していた頃、どうしていきなり素を見せるようになったのか、今でも謎だけれど。
豹変した当時の記憶を蘇らせつつダイニングテーブルの椅子に座ると、律貴が出かける準備をしながら「より子」と呼んだ。いつの間にか優しい面持ちに戻っている。
「六カ月くらいになって体調も安定してたら、近場でゆっくりできるところに一泊しに行こうか。貸切風呂のある温泉とか」
「行く!」
ぱっと表情を明るくして即答する私に、彼は驚いたように目を丸くしたあと無邪気に破顔した。
……あからさまに喜んでしまった。きっと、そんなに旅行に行きたかったのかと思われただろう。旅行に行けることより、律貴とデートできるのが嬉しいんだけどな。
私自身が愛されなくてもいい……だなんて、控えめなことを思えなくなってきている自分がいる。
彼を送り出して玄関のドアが閉まったあと、私は小さくため息を吐き出し、この結婚生活の行く末がどうなるのか思いを巡らせていた。