短編『おやすみ、常盤さん』
常盤さんにあのように告げてからも、なぜか変わらず頻繁に電話がかかってくる。
相変わらず僕を気にかけてくれることに喜ぶ一方で、聞き分けてくれない常盤さんに苛立ちを覚えた。
出てしまったら、僕はまた修行僧に逆戻りだ。
心を鬼にして、無視を決め込む。
たまに根負けして出てしまうこともあったけれど、特に用がないとわかるとすぐに切った。
常盤さんと電話を繋いでいないと、どうしようもないくらいに夜が長く感じる。
でも修行僧にはなりたくないから、ぐっと堪えて夜を凌いだ。
これは、常盤さんのためでもある。