日陰のベンチで、あなたに会いたい


……噂と言えば、一年に高嶺の花の美人か。

その美人とやらよりもこっちは違う子が気になってるんだよ。

……なんてことは友達だとしても絶対に口が裂けても言わないし、
誰にも知られてはいけない。

今まで ”女子?興味ないです” みたいな感じだったのに、
”顔も名前も知らない女子のことが気になっています”
なんてことを知られた日には軽く死ねるくらいに恥ずかしい。

気を付けようと心の中で自分自身に誓っていると、
課題に戻ったはずの友人が再びこちらに振り返る。

僕とは違い、喜怒哀楽の激しい友人は ”哀” を前面に出した表情をしていた。

嫌な予感がする。

「ひぃ~かぁ~るぅ!

この問題とこの問題とこの問題……てか、半分くらいわかんない!

このままだと居残りになる! 

教えてください、洸様!」

両のてのひらを合わせて、お祈りのポーズをする目の前の友人。

人が心の中で教訓をかみしめているのに、この友人ときたら全くしょうがない。

「話してばっかだから進まないんだよ。

答えは教えないぞ。

けど、やり方は教えてやる」

「ありがとうぅぅぅ!」

抱き着いてくる勢いの友人を片手でおさえながら教科書の該当部分を開く。

おそらく普段の授業をほとんど真面目に聞いていないだろう友人に説明を始めた。

鐘が鳴るまであと15分。
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