日陰のベンチで、あなたに会いたい

その足跡を聞いた瞬間、体がこわばり、緊張が走った。

あの子が来たのだろうか。

足音からは判断ができない。

でも昨日聞いた軽やかで、上品な足音はまさに、昨日のあの子だと思った。

昨日と同じで、僕とは反対側で足音が止まる。

「今日もいい天気だなぁ……」

なんとなく哀愁を含み、呟くように言った声は、まさしく昨日と同じ女子の声だった。

来てくれた……!

僕のためではないことはちゃんとわかっているし、顔も知らない女の子を勝手に待っている男なんてはたから見たら気持ち悪いのは重々自覚している。

でも、昨日知り合った(正確には勝手に僕が知ったのだけど……)ばかりだが“名前の知らない女子”のことで頭がいっぱいだった。

そして、今日も昨日のように話してくれるのかと期待して、ベンチに座っているであろう女子に耳を傾けた。
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