日陰のベンチで、あなたに会いたい

「はぁ、やっぱり、初めから話そうとするから上手くいかないのかなぁ。

話そうとすると緊張して、いつもの悪い癖が出ちゃうんだよね……。
挨拶からの方がハードル低いかな?

でも挨拶して、中学生の時みたいに無視されたらどうしよう。
……そんなのしばらく立ち直れないっ!!」

昨日と似たようなことを悩んでいて、やっぱりこの子はこういう子なのだと安心した。

でも、その子の“友達作り作戦”が全くうまくいっていないことを知り、なんとなく可哀そうに思う。

まあ、吐き出すように言っていたことが、周りに恵まれない限り、昨日今日でうまくいくわけがないのだが。

裏で僕が聞いているとも思っていないこの子の一人ごとは続く。

「でも中学の時にした挨拶は、練習もしないでチャレンジしたから失敗した感はあったし、挨拶を体に刷り込んでおけば上手くできるかもしれない!」

挨拶を刷り込むってなんだ。

挨拶って刷り込むものだっけ?

今日は、笑いをこらえるまでは行かないが、少し腹筋に力が入っていることからじわじわと迫ってくるのを感じる。

「今日これからの挨拶は不自然だから、明日の朝挨拶をできるように頑張ってみよう!」

意気込んだ“一生懸命な子”は、「おはよう!」と、挨拶の練習をし始めた。

そこで僕の腹筋は、また痙攣を始めた。

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