日陰のベンチで、あなたに会いたい
なぜなら、普通の声だったが、低い声で言ってみたり、高い声でいてみたりと様々な声色で挨拶の練習をやり始めたからだ。
本人は一生懸命にやっているのだろうが、僕からしたら奇行に思えてしまう。
ようやく慣れて、落ち着いた頃、どうしてこんなにいい子なのに友達ができないのかな。
まぁ昨日今日と話は聞いていて、だいぶコミュ障感は感じるが、この場所にいるこの子はこんなにいい子で、面白い。
そして、何より“かんばれ”って応援したくなる子だ。
僕はそのままの君でいいと思うんだけどなぁ。
僕の思いなんて知らずに、「今夜家でもこっそり練習しよう!」と意気込んで、校内に戻る足音が遠ざかって行った。
今日もこっそりと後ろ姿を見ると、昨日と同じ芯があって真っ直ぐな背中。
“幸せになってほしい”そう強く感じた。
それから僕は自分が気持ち悪いのを自覚しながら、前以上にこの場所へきて、あの子が来た日はあの子の独り言を聞くようになった。
幸い僕はもともと一人で行動することが多いから、変に思う人はいなかった。
たまに後ろをこっそりついてくるような女子がいたが、それはいつもより徹底的に撒いた。
あの場所までついてこられて、あの子の時間を奪ってしまうのが嫌だった。
一生懸命なあの子の声を聞けば聞くほど、僕の中の好感度は上がり、すっかり僕は彼女のことが好きになっていた。
彼女は不器用なだけで、純粋で、彼女の後姿と同じ、真っ直ぐなんだと痛いほどわかった。