日陰のベンチで、あなたに会いたい
「あははは、ごめんね、急に話しかけて。
びっくりしちゃったよね」
驚いた。
話しかけられたときはとても驚いたが、今の反応の方が数倍も衝撃が強かった。
初見で私の言動に笑った人は、この人が初めてだった。
私に対する反応の種類は、敵意を表すか、そそくさと離れていく人がほとんどだから。
たまに、笑顔を崩さない人はいるけど、こんなに無邪気に私の前で笑った人はいない。
そして、その無邪気な笑顔を崩さずに先輩は話し続けた。
「いやね、近くを通りがかったらおいしそうな弁当食べてるなって思ってさ。
いつもここで食べてんの?」
何とも不思議な理由で話しかけてくる人だと思った。
弁当がおいしそうという理由で話しかけてくる人がいるんだろうか。
今までない話しかけられ方と、人見知りが相まって怖さが倍増した。
何で私なんかに話しかけてくるんだろう、この人。
早くどっか行ってくれないかな。
「そうだとしても、先輩に関係あるんですか?
特に用ないなら話しかけないでもらえますか」
先輩はまた、無邪気に笑った。
さっきは驚いたが、改めて考えるとなんで笑っているのかに心当たりがなく、ここまでくるとほんとに怖い。
「怖がらせてごめんね、僕2年の東堂洸っていうんだ。
よろしく。名前覚えてくれると嬉しいな」
なんだろう、この、人の話を聞かない系のコミュ力お化けは。
変な人過ぎて、恐怖が一周回って冷静になってくる。
そこでふと思った。