日陰のベンチで、あなたに会いたい
「どうしたら友達ってできるのぉぉぉおお……!」
我慢していた思いを吐き出すように、そして唸るように言うのを聞いて、思わず吹き出しそうになった。
吹き出さずに、我慢できた僕をほめてほしい。
「高校に入ったら友達頑張って作ろうって思っていたのに……!」
“顔も知らない女子“のため込んでいたであろう独り言は止まらない。
「ああ、せっかく話しかけてくれたのに!
せっかく話しかけてくれたのにぃぃぃ……!
あんな言い方したら誰だって『あ、この子とは関わるのやめよう。顔も怖いし』
って思うに決まっているじゃない!
緊張すると言葉の選択が辛辣になるの直したいっ……!!」
悲痛な思いがあって言っているのは分かる。
分かるが……。
今までこんなに切実に自分の思いを吐き出している人は、見たことが(正確には聞いたことだが)なかったから、他人の何も取り繕っていない願望を聞くことはこれほど面白いとは思わなかった。
セリフのようなところは声色を変えて話すのが、さらに面白くて必死に笑い声を抑える。
ああどうしよう!
腹筋が痛すぎてどうにかなりそう。
さっきとは違う意味でどこかへ行ってほしい。
「違うの!
私はただ仲良くなりたくて、見てただけなの。
『あ、そのキャラクターかわいいよね』って言いたかっただけなのに、
私の目つきが悪いせいで『あ、うるさかった? ごめんね』って謝らせちゃったぁ。
いや、せめて、その後に『んーん。そのキャラクターかわいいよね』って言えていればっ……」
ごめん。
さっき『早くどっか行って』って思ったの謝るから、もう許して。
笑いすぎて、お腹苦しくてちょっと痙攣起こしてるから。